日本一のプリント技法(自社調べ)を誇るプリント工場の丸昇が、プリント技法カタログ第二弾を発行いたしました。掲載プリント技法はなんと【118技法】!!第一弾を大幅に上回る技法数です。本の厚みも2cm近くあり、ずっしりと重いです。まさにプリント技法の図鑑です。ぜひ手にとっていただきたい一冊となっております。プリント技法をどうやったら再現できるかのHOWTO本ではなく、技法の特徴などを紹介した解説本になりますので、ご購入の際はお気をつけください。
本書序文抜粋
■歴史 私が T シャツのプリント(シルクスクリーンプリント)に出逢ったのは 11 歳の時まで遡る。父の立ち上げた会社が創業 2 年目に新たに立ち上げたプリント部でのことだった。真夏にも関わらず、外より暑いスレートの掘立て小屋のような小さな工場内で、汗を噴き出しながら当時の職人さんが一生懸命に作業していたのを幼いながらによく覚えている。 当時小学生だった私はプリントを刷ることはなく、刷られたプリントをドライヤーで乾かす作業を手伝っていた。乾いたら次の色が刷られ、 それをまた乾かすという作業を繰り返しながら、鮮やかなグラフィックが T シャツに刷り上がっていくのが嬉しくもあり、何より楽しかった。 ■転換 26 歳の時、小さい時に手伝ってきたプリントを思い出しながら夢と希望を持って丸昇に戻ったが、現実はそれほど甘くはなかった。海外生産の波に飲まれ、国内製造の基盤は大きく様変わりしていたのである。父には神がかった先見性があったため、私をアトリエのようなハンドメイドプリント工場さんに丁稚に行くように指示し、私はそこで素晴らしい師匠と出逢うことができた。そこで過ごした半年間は今考えると奇跡のような毎日で、芸術作品のようなプリントは全て目を見張る物ばかりだった。そこでプリントに対する考え方や発想の転換方法を学び、丸昇のプリント技法の礎を築くことができたのである。 ただ半年後に戻った丸昇では、例に漏れず当時の国産メーカーである得意先さんたちがどんどん消滅していっており、受注は減り続けていた。 このままでは倒産してしまうと思った私は、丁稚で培ったにわかな知識で深夜遅くまで研究とサンプル作りに励み、まだほのかに暖かい出来たてのサンプルたちをスーツケースに詰め込んで東京へ営業に出掛けたのである。 まだ表現力に乏しい荒削りなサンプルたちは、それでも当時のデザイナーたちを魅了し、作品作りに欠かせないインスピレーションを呼び起こす助剤になったようだ。その後そこから受注に漕ぎ着け、丸昇のお客様がほぼ入れ替わるのにそれほど時間は掛からなかった。 ■カタログ作成 それから 10 年ほどの年月が経ち、丸昇の「作品」とも呼べるサンプルたちを何とか保存できないか、との声が上がり8年前に紙のカタログ形式でそれらを発刊することになった。当時の私は紙でTシャツのプリントをどこまで表現できるかに疑問があったため、プリントした布を貼り付ける形でカタログにして欲しかったのだが、従業員からの熱い説得により紙媒体でのカタログを作成することになったのである。 完成した『丸昇技法カタログ vol.1』は予想を大きく上回る出来でとても満足のいくものだった。最新の撮影技術とプリント技術を駆使することでプリントの細かいディテールを美しく表現することに成功し、解説も付けることでデザイナーたちのインスピレーションを活性化させ、企画のお役に立てるであろうカタログが完成した。 また月日は流れ、『丸昇技法カタログ vol.1』の在庫がなくなり始めた頃、増刷の話が上がった。しかし「ただ増刷するのでは丸昇らしくない」「どうせ作るなら新しい作品を追加してさらにパワー UP したカタログを作ろう!」との社内の熱い声に推され、新カタログの制作が始まった。カタログ作りはただサンプルを作って撮影して製本するのではなく、技法の選定、技法に合うアイテムの選定、アイテムカラーとプリントカラーの選定などデザイナーたちが情熱を込めて行う企画と同じ作業から始まる(デザイナーや企画をされている方々は毎シーズンこの作業をされているので頭が下がる)。そこから実際のサンプル作りにとりかかるのだが、我々プロが作っても思っていた仕上がりと違っていたり、技法の効果が分かりにくかったりしてサンプルを作り直すことも多々ある。洗いや後染めの後にサンプルの仕上がりに納得いかない時は正直心が折れそうになるが、経験値が増えた、と自分を鼓舞して再サンプルに取り掛かるしかない。1 枚だけでは味が出ないため 10 枚以上も無駄に作らないといけない技法もある。数々の技法たちと向き合いながらのサンプル作りは、日常業務とは別の時間に行うため深夜に及ぶ時もある上、何せ時間が掛かる。現場のメンバーは技法の多さが恨めしく思える日が幾度となくあっただろう。 こうして約 1 年の制作期間を経て作り上げられた「作品」たちは、製本するためにも社内で何度も議論された。この製本作業やレイアウト作成は普段の業務にないので、何度も打ち合わせをしては白紙に戻したり、慣れない作業で嫌な空気になったりすることもあった。そうした紆余曲折を経て、やっと自分たちの理想に近い形でカタログを完成させることができた。今思えばそれも楽しい贅沢な時間であったと感慨深いものである。 前置きが長くなってしまったが、私たち丸昇が作り上げた「作品」たちを集約した『丸昇技法カタログ vol.2』。是非とも手に取って楽しんでいただけたらと思う。定番から最新機械、機能材料インク、手の込んだヴィンテージ加工など、たくさんのアイデアが盛り込まれたプリント技法辞典。 新しい企画や作品作りの一助を担えたら幸いである。 2022年4月 有限会社丸昇 代表取締役 安藤明弘
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